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2022.08.15
クラウドの基礎知識について分かりやすく解説
かつての企業では、各支店ごとにサーバーを購入しネットワークに接続していたため、適切なデータ管理が非常に困難であった。
現在、様々なビジネスシーンで耳にする「クラウド」。
このクラウドの登場によって、膨大の量のデータ管理がすこぶる簡便になったことは言うまでもない。
しかし、クラウドを日頃から当たり前のように利用しているユーザーであっても、その概要について正確に説明できる人は意外に少ないのではないだろうか。
この記事では、もはや現代のWebシステムの基盤とも言える「クラウド」について、分かりやすく解説していく。
そもそもクラウドとは
クラウドとは、クラウドコンピューティングの略称であり、情報システムやサーバー、ネットワークなどのIT資産をインターネット経由で利用する形態を言う。
近年では、Webシステムをクラウド上で提供することが増えてきた。
総務省が公表した「令和3年度版 情報通信白書」の中で、クラウドサービスの一部でも利用している企業の割合は約7割に上っていると報告している。
また、実際に利用して効果に実感があったと回答した企業も9割近くに達している。
参考;総務省「令和3年度版情報通信白書」
https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r03/html/nd242140.html
なぜ、これほどの需要があるのか。
冒頭で述べた通り、過去において各企業は複数の拠点にサーバーを設置していたが、クラウドではその必要がない。
コストが大幅に抑えられるうえ、運用管理が不要、更にいつでもどこでもデータが共有できるという大変便利なツールなのである。
クラウドは、クラウドサービスを提供する事業者とそのサービスを利用する企業や個人で構成されている。
クラウドサービス利用に関しては、システムを利用した時間や量に応じて費用が発生する「従量課金制」が一般的である。
また、状況に応じて利用量の拡大や縮小が容易にできるのもメリットの一つと言える。
クラウドに関するIT機器や関連設備はクラウド事業者が保有しており、それらの機器や設備の運用についても事業者が行っている。
更にセキュリティや多様な通信手段への対応が整備されていることから、企業・個人問わず利用者が増え続けているのだ。
クラウドサービスの種類
現在のクラウドでは、ICTリソースの全てが提供されており、サービスが多様化している。
ICTとは「Information and Communication Technology」の略称で、日本語に訳すと「情報通信技術」となる。
クラウドは、企業が苦手としている分野だけを利用することもできるが、大別して3つに分類される。
まずは、「IaaS」と呼ばれる事業者がサーバーやネットワーク機器、OSを提供するサービスで、ミドルウェアや開発環境、アプリケーションはユーザーがインストールする。
2つ目の「PaaS」であるが、IaaSに加えミドルウェアとアプリケーションの開発環境が実装されている。プロバイダーのレンタルサーバーは、Webシステムに特化したIaaSやPaaSである。
3つ目は「SaaS」で、ユーザーがアプリケーションとその機能を利用するサービスで、アプリケーションの設定・変更などを行える。
Webサイトやアプリやシステムでは、IaaSかPaaSが選択される。
現在は、クラウド環境でシステムを開発してそのまま運用することも増えてきたことから、PaaSの利用が増えている。
クラウド事業者の大半は、IaaSとPaaSの両方のサービスを提供しているのが一般的だ。
また、クラウドには大きな2つのタイプがあることも覚えておこう。
一般的にクラウドサービスと言う場合は、いわゆる「パブリッククラウド」を指すことが多い。
パブリッククラウドとは、クラウドサービスの象徴的存在であるアマゾンの「AWS」、マイクロソフトの「Azure」、グーグルの「GCP」などが、不特定多数の企業や団体、個人に提供しているサービスのことである。
パブリッククラウドの特徴は、コストが比較的安価であることや最新技術が早々に利用できることが挙げられるが、ユーザーが利用するサーバーなどに関しては、システムの全体構成の中で最適な場所のCPUやメモリ、ディスクに割り当てられるため、ユーザーからは契約しているサーバーがどれなのかは見えない構造になっている。
これに対して、自社のためにクラウドサービスを提供したり、またはデータセンターなどに自社のためのクラウドスペースを構築するのが「プライベートクラウド」である。
この形態であれば、自社のどのシステムがどのサーバーを利用しているのかを把握できる。
クラウドの市場全体では年々拡大を続けているが、近年ではプライベートクラウドのニーズが増えてきている傾向にある。
社内や取引先などを含む特定のユーザー向けのWebシステムであれば、プライベートクラウドの利用が増えていくと想定されるが、反対に不特定多数のユーザーや変更が多いシステムでは、今まで通りパブリッククラウドが選択されるだろう。
既存システムをクラウド化するには
さて、実際に既存のシステムをクラウド化する場合について解説していく。
システムを別の環境に移行することを「マイグレーション(Migration)」と言うが、実際の移行作業はそれほど簡単ではない。
仮想環境ではないシステムをクラウド環境に移行するには、2つの段階を踏まねばならない。
第1段階は、サーバーの仮想化だ。
クラウドサービスは、基本的には仮想環境を前提としている。
従って、既存のシステムを仮想環境に移行する必要がある。
第2段階は、クラウド環境への移行である。
仮想化されたシステムをクラウド上に移行する。
システムの規模や利用しているソフトウェアの量によって工程数は異なってくる。
第1段階については、以前は移行計画書で手順を決めて綿密に実施していたが、近年は仮想化ソフトのマイグレーションツールを利用して行っている。
また、システムの構築に必要なサーバーやネットワーク機器などを自社で保有し運用しているオンプレミスの仮想サーバーから、クラウドの仮想サーバーにマイグレーションすることもある。
しかし、確実に進めたいこともあり、更に環境やハードとソフトの親和性なども考慮すると、クラウド事業者側に専用の物理サーバーを用意して、一旦そこにコピーを作成してから展開するケースが増えている。
まとめ
この記事では、クラウドの基礎知識について解説してきた。
コロナ禍の影響で様々なオンラインサービスが進行する中、今後もクラウドの需要は増え続けていくことだろう。