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マーケティング

2019.09.09

ニーズの心理学における行動の法則とは

ニーズの心理学における行動の法則とは

行動の法則とは

消費者のニーズにかかわる心理学に「行動の法則」というものがある。
これは、消費者が強いニーズ(必要性)を感じたとき、かならず行動として表れるというものだ。

企業のシャンプー開発において、男女別の洗髪行動の観察がおこなわれた研究結果がある。
この研究では、女性は明らかに「髪の毛」を洗っているのに対し、男性は「頭皮」を洗っているということを発見した。
女性は「髪をきれいに仕上げたい」ために髪を洗い、男性は「頭と頭皮を爽快にしたい」ために頭皮を洗うという洗髪行動の違いがあった。

このように、規模の大小にかかわらず、強いニーズであるか否かは行動によって表れるということが確認されている。たとえば恋愛において、本当に好きな人に「毎日会いたい」と強く願ったとしたならば、毎日会えるような場所に住んだり、会えるための行動をとる。

あなたも「強く願っていることを現実として行動に起こす」という経験があるのではないだろうか。
これらを心理学では「行動の法則」と呼ばれている。

行動の法則の活用でヒット商品を生み出す「やずや」

この行動の法則でヒット商品を生み出した通販会社「やずや」の事例がある。

やずやでは商品開発のテストマーケティングにおいて、少量のチラシを配り応答を分析し、過去のデータと比較しチラシの数を増やしたり、打ち切ったりしていた。
テストマーケティングとは、新製品を本格的に販売する前に、限られた地域で少数の顧客に対して販売するということを指す。やずやはこのチラシにより消費者の意識ではなく「行動」を分析した。

この事前調査の手法は多くの企業が取り入れているが、反応率のみを確認する場合が多く、消費者がなぜそのような行動をとったのかという詳細な行動の分析に及ぶことあまりない。
やずやはこの事前調査をおこなうなかで、キャッチコピーや客層などを変えながら実際の消費者の行動を分析し、戦略的にヒット商品を創りだすことに成功している。

「欲しい」と「買う」が必ずしも一致しない


商品開発のテストマーケティングにおいて、アンケート調査をおこなう際に注意しなければならないことがある。
それは、消費者が欲しいと発言しても、必ずしも買うとは限らないということだ。

日本人を対象におこなわれたニーズの行動調査によると「ぜひ買いたい」と発言した人の商品購入の確率は非常に高く、「買ってみたい」程度の表現で答えた人の購入確率は非常に低いというデータがある。また、「ぜひ買いたい」と答えた人のなかでも、商品の魅力ではなく「買う理由」を発言した人の購入確率はきわめて高いことがわかった。

テストマーケティングにおける「行動の法則」の観察は、小さな会社ほどおこなうべきだとされている。
ニーズがあるとわかった商品を本当に必要としている人を発見することが、その小さな会社を発展させることになるからだ。

欲しいと発言しても買わない理由

商品開発のアンケート調査で「欲しい」と答える人がいる。
しかし、その「欲しい」と発言した人が必ずしも買うわけではない。

その「欲しい」と発言しても買わない理由は「それほど欲しいと思っていない」からだ。
商品自体は魅力的だと発言しても、消費者は必要性を感じない限り基本的に商品を購入することはない。

それほど欲しくない理由として例えば次のようなことが挙げられるだろう。

その価格を出してでも欲しいと思わない
魅力的だと感じるが今は必要性を感じない
そもそも必要性を感じない

街に行けば高品質の商品が低単価で提供されている場面が多くある。しかし、その商品を買い物かごに入れるに及ばないケースがこの心理状況にあたるだろう。

やりたくないのに行動していることは強いニーズの表明


「やりたくない」や「たくさんの問題を抱えている」にもかかわらず、行動している場合がある。
これは強いニーズをあらわしている。

あなたもなにかの課題を目の前にしたとき、「やりたくない」という気持ちになった経験がきっとあることだろう。
しかしこのとき、本当にクリアしなければならないことは課題を達成するための行動をし、重要だと判断していないことに対しては、課題達成を後回しにした行動を自然と選択してはいないだろうか。

行動だけを見れば自然な行動パターンにうつるが、ここではとても強いニーズが確認されている。
このニーズを満たす代表的なビジネスに「代行業」がある。人が大変だとか難しいと考えていることを商品化し、ニーズを満たしているのだ。

「やりたくない」のにやっている、「大変」なのにやっている行動を確認できる場面に出くわしたとき、それはヒット商品の鍵となるかもしれない。

まとめ

人間の小さな行動パターンからニーズを発見できることは多くある。
これらは心理学におけるGDI深層心理調査法に基づいている事例で、おもにビジネスにおいて商品開発の分野で活用されている。

消費者のアンケート調査においても、その調査結果のみで判断することなく、実際の行動パターンを分析していく方法で正確なニーズを発見することができる。商品開発をする際、消費者の心理やニーズについて深く考えてみることをおすすめしたい。

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