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マーケティング

2019.09.02

音の重要性|サウンドマーケティングのすすめ

音の重要性|サウンドマーケティングのすすめ

人間は「音」に反応する

あなたはビジネスの中で「音」を取り入れているだろうか。

人間は音を記憶する生き物であり、音には体験を記憶に刻む力がある。昔どこかで聞いたことのあるメロディを少し耳にしただけで、当時の記憶が鮮やかによみがえってくる経験はないだろうか。

人間の脳と聴覚は密接に関係しており、「音」は自分や他人を動かす力を持つ。人間はどのような「音」に反応するのか、動かされるのかを理解するだけでマーケティングは一変するだろう。

ブームモーメントで人を動かす


いい音やいい音楽がちょうど良いタイミングで聞こえた瞬間、その音はわたしたちの記憶や感情を強く刺激し、新たな体験を生み出す。

ブームモーメントとは、きわめて印象深い体験を起こす瞬間のことをいう。ブームモーメントが生じた瞬間、「これが食べたい」「これを着たい」「これを観たい」「これが欲しい」など、人は感情を刺激され、その体験を記憶するだけではなく、行動に起こすことも多い。

実はわたしたちは日常の中でも、多くのムーブモーメントを体験している。
たとえば、電車の発車ベルの音だ。
発車ベルはもともと、乗客がドアにはさまれないようにする警告音だが、発車寸前であるというストーリー性をもたせることで、乗客の乗り遅れるかもしれないという心配や焦り、急げば間に合うかもしれないという期待を引き出すことに成功した。

他には駅によって異なる発車メロディを鳴らすことにより、案内表示を見ずに自分の位置を感覚的に把握できる工夫もされている。音とは情報であり、テレビCMの挿入歌などさまざまな場面でブランド戦略としても活用されている。

しかし、音を活用したブランド戦略では提供者側が好きだからという理由だけで音や音楽を使ってブランド戦略は注意が必要だ。
音や音楽を聴いてくれるお客様に感じてもらいたいイメージを描き、戦略的に音や音楽を活用していく必要がある。提供者側の好みだけである場合、大切な企業のブランドイメージを傷つける可能性があるからだ。

サウンド・マーケティングの実践


音を活用したブランド戦略は、誰にでも簡単に実践することができる。
個人経営の小さなお店でも、コストをかけることなく簡単にでき、そして大きな成果を作り出すこともできる。

効果音の制作とは、必ずしも莫大なコストが必要なわけではない。ブランドイメージを高める効果音を設定することは、顧客体験をより一層充実させることができ、費用対効果もきわめて高い。

音の演出で感動を与える東京ディズニーランド

東京ディズニーランドは音による演出により、ゲストにとって最高の感動を作り出すことを成功させている。

ゲストは、駐車場を降りてから帰るまで、たえず音楽に囲まれている。テーマパークの雰囲気にあったBGMや蒸気機関車の音、水の音など、さまざまな音の演出により、おとずれるゲストをファンタジーの世界に導いているのだ。

ディズニー・イマジニアリング社の首席メディアデザイナーのジョー・ヘリントン氏は、音について次のように述べている。
「わたしたちは視覚情報優位の社会に暮らしている。しかし、音を完全に取り去ったとしたらどうだろう。私たちはきっと多くの視覚情報を誤解する。音は視覚情報よりも早く、雰囲気をつくることができるのだ。」
「音が押しつけがましく聞こえたり、楽しい気分を邪魔するようでは意味がない。ゲストに気づかれないようにすること、これが一番大事なのだ。」

音は感覚を左右する


オックスフォード大学と実験心理学者の共同研究で、ポテトチップスを食べたときのパリパリ感の大きさが味覚にどのような影響を与えるかという実験がおこなわれた。
結果は、ポテトチップスを食べたときのパリパリという音が大きければ大きいほど、新鮮でおいしく感じるというものだった。

また、イギリスのマンチェスター大学の研究では、雑音が味覚に与える影響について調べた研究結果がある。
好みのBGMを流したときの味覚とミキサーが作動したときと同等の音の中での食事では、後者の雑音ととらえられる音の中での食事のほうが、風味や塩気、甘さに対する味覚が鈍くなることが判明した。

音は味覚だけではなく、人の感覚にも密接に関係していることがわかる。

音のブランディング戦略


音のブランディングとは、音を戦略的、戦術的に用いることで目に見える成果を出すマーケティング手法だ。

ブランディングの目的は、商品やサービスを提供する企業がストーリー性のあるメッセージを伝えたり、ストーリーの中で自社製品の重要性をアピールすることにある。
音を活用する際に最も重要なことは、音に何かを感じさせる力を持たせられるかどうかだ。つまり、聴き手の脳裏に昔の記憶やストーリーを描くことができなければ意味がない。

音をマーケティングに取り入れる際は、商品をどのように伝えていくか、どのようなイメージをもってもらいたいのか、を明確にしておく必要がある。

まとめ

「音」は情報を感覚的に伝えることができるとても便利なものだ。
明るい雰囲気や楽しい雰囲気、落ち着いた雰囲気など表現次第でさまざまな演出ができる。また、低コストで取り組みやすいのも特徴だ。
音の活用は社内でも生かすことができるため、自社のブランドイメージに合わせた音の活用を検討してみてはいかがだろうか。

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