弱者の戦略「ランチェスター戦略」とは

ランチェスター戦略とは、弱者が強者に勝つための戦い方のことを説いた戦略方法だ。
ビジネスにおいて、弱者は中小企業、強者は大企業のことを指す。

零細、中小企業は資金源の豊富な大企業と同じ戦略を用いても勝ち目がない。そこで、このランチェスター戦略という弱者が強者と戦っていくための経営が必要になってくる。
ランチェスター戦略はビジネスの世界でも有名だが、実際の戦争にもその戦略が確認されている。

戦略と戦術の違いとは

「戦略」と「戦術」は、ともに勝利をおさめるために大切な関係性にある。
「戦略」は、次の要素の組み合わせから相手に勝つための方法を編み出すことを指す。

①状況
②条件
③場面
④範囲

一方「戦術」とは、この戦略を成功させるための手段のことを指す。
戦略という大きな目的に対し、どのような戦術を用いて勝利していくか、という考え方だ。

企業であれば、経営陣は会社がどこに向かうのかの方向性（戦略）を明確にする。そして、その戦略を実現するために、営業や各部署にその戦略を達成するための具体的な戦術を設定していくという構図になる。

戦術はすぐにその場の指示で変更が可能だが、戦略は人材やコストなどさまざまな資源を投じているため、すぐに変更すること難しい。そのため、社長や経営陣は勝つためのシナリオ（戦略）をしっかりを練る必要があるのだ。

小さい市場で圧倒的ナンバーワンを目指す

中小企業がとるべき戦略のひとつは商品・ターゲットをセグメント（細分化）することだ。

中小企業は、経営資源が豊富にある大企業と同じ戦略を立てるべきではない。大企業と同じ戦略で市場のシェアを取り合っても勝ち目はない。そのため中小企業はビジネスをする地域、商品、ターゲットをセグメントしていく必要がある。

競合の少ない地域、差別化された商品、若年者や高年者向けなど客層の絞り込みをしていくことで、市場をセグメントしていく。このセグメントした一つの市場で圧倒的ナンバーワンを目指すことがランチェスター戦略の概念となる。

次にランチェスター戦略を活用した事例をご紹介しよう。

ネット専門の証券会社

株式売買はもともと、証券会社の営業担当に直接売買を注文するなど対面営業が主流だった。

当時は、数十社の大手証券会社が市場争いをしており、その下に松井証券などの企業が控えていた。そこで、いち早くネット取引に参入したのは松井証券だった。

1995年、3代目社長の松井道夫氏は、社内の反対を押し切りネット取引市場に参入。
国内で本格的にネット取引を開始させ、従来の対面営業スタイルを撤廃した。猛反発していた営業担当のなかには、自分の顧客をもって会社を去った社員もいたという。

しかし、ネット専門の証券会社へと転機したことから会社は急成長し、ネット証券としてはじめて東証一部に上場を果たした。松井証券のネット取引と対面営業の撤廃は、まさに「選択と集中」の結果だった。

東京都八王子にある無店舗型の電気屋

大手店舗の出現により、個人経営の店が廃業に追いやられているケースは多くある。

東京都八王子にある真田電気は、このような状況のなかでも他社との差別化により成功を収めた。
真田電気は、従来の来店型から出張サービス専門に切り替える差別化を図った。

出張サービスで家電製品を販売し、さらにはリフォーム工事や引越しの手伝いなども受注していくる。顧客からしてみれば、真田電気に頼めば一度に済んでしまうので楽というメリットがあったのだ。

従来の電器屋の概念から消費者目線での差別化を図り、事業を成長させていく。これも、市場のセグメントによるランチェスター戦略の成功例だ。

市場占有による3つの大きなメリット

ランチェスター戦略の目的は、市場シェアを上げることだ。しかし、それは全国的な大きな市場ではなく、自社でセグメントしたニッチな市場で問題ない。

企業は、この市場シェアを高めることで大きく3つのメリットを得ることができる。

メリット1　価格主導権

市場シェアを高めることで価格主導権を獲得することができる。
企業は価格競争に巻き込まれることなく、高い利益率を維持することができるのだ。利益を商品のブラッシュアップや事業への投資にまわることができ、健全な経営状況が実現しやすくなる。

メリット2　代名詞効果

市場でナンバーワンをとることにより、代名詞効果という大きなメリットを得ることができる。代名詞効果は、その名称を耳にするだけでイメージさせる効果のことをいい、以下のような例がある。

ヤマト運輸→「宅急便」
ジョンソン＆ジョンソン→「バンドエイド」
増田屋コーポレーション→「ラジコン」
漫画家みうらじゅん氏→「ゆるキャラ」
ＴＯＴＯ→「ウォシュレット」
クラレ→「マジックテープ」
川上産業→「プチプチ」
タッパーウェア→「タッパー」
二トムズ→「コロコロ」
味の素→「味の素」

これらはすべて企業の登録商標であり他の企業が使用することはできない。名称をきくだけでどのような商品であるかイメージできるのも多くあるのではないだろうか。
代名詞効果とは、市場シェアのナンバーワンを実現することにより、ブランド戦略も効率的におこなうことができる大きなメリットがある。

メリット3　新鮮で価値のある情報が手に入る

企業はシェアを高めることでより新鮮で価値のある情報が入ってくるようになる。

市場を独占することで、多くの消費者や取引先などと接することができる。そのため、結果的に市場におけるリアルタイムの情報を手に入れることができ、競合よりも早く企業戦略を立てることができるというメリットがある。

ランチェスター戦略：ナンバーワンへの道筋を描く成功事例

ランチェスター戦略は、競争激化するビジネス界においてナンバーワンへの道筋を示す有効な戦略である。その中でも、一部の企業がこの戦略を巧みに利用し、その分野でナンバーワンの地位を獲得した例が見受けられる。今回はそのような成功事例を3つピックアップし、その適用と成果について考察する。

1. Google

インターネット検索エンジンという分野で、Googleはランチェスター戦略を見事に実行した。Googleが初めて登場したとき、すでに検索エンジン市場はYahoo!やAltavistaなどの競合他社に占められていた。しかし、Googleは独自のアルゴリズムを開発し、これによって他の検索エンジンが抱える問題を解決した。これにより、Googleはユーザーの信頼を勝ち取り、その後急速に市場シェアを拡大し、今日では圧倒的な存在感を示している。

2. Amazon

オンライン小売業界におけるAmazonの成功も、ランチェスター戦略の適用が見られる事例だ。Amazonは、初めてのオンライン書店としてスタートしたが、徐々にその商品ラインナップを広げ、現在ではあらゆる商品を取り扱っている。また、Amazonは、顧客サービスやロジスティクスにおける優れたインフラストラクチャを築き上げ、競合他社に対する優位性を確立した。これらの戦略により、Amazonはオンライン小売市場における圧倒的なナンバーワンの座を確保している。

3. Apple

Appleもまた、ランチェスター戦略を駆使した成功事例と言えるだろう。Appleは、初めてのパーソナルコンピューター市場で成功を収めたが、その後、音楽プレイヤー（iPod）、スマートフォン（iPhone）、そしてタブレット（iPad）といった新しい製品カテゴリを創出した。これらの製品すべてで、Appleは競合他社に対して高品質なデザインと使いやすさを武器に市場を牽引し、それぞれの分野でナンバーワンの地位を築き上げた。

これらの企業が示すように、ランチェスター戦略は競争激化する市場でナンバーワンになるための有効な手段であることが確認できるだろう。それぞれの市場状況と自社の強みを理解し、戦略を適切に適用することが成功への鍵であると言えよう。

ナンバーワン戦略とランチェスターの法則：成功への道標

ビジネス界でトップを目指すために、ナンバーワン戦略とランチェスターの法則は非常に有効な手法である。これらの戦略は、企業が自身の強みを活かし、競争力を高め、そして市場での地位を固めるために重要な役割を果たす。

Microsoft

この戦略の良い例としては、テクノロジー企業のMicrosoftが挙げられるだろう。Microsoftは、パーソナルコンピューター市場でのオペレーティングシステムの分野において圧倒的な市場シェアを保持している。MicrosoftのWindowsは、世界中のほとんどのパーソナルコンピューターに採用されており、これによりMicrosoftは同分野でのナンバーワンの地位を堅持している。

ナンバーワン戦略とランチェスター戦略：市場をリードする力

ナンバーワン戦略とランチェスター戦略を組み合わせることで、企業は市場でのリーダーシップを獲得し、その地位を維持することが可能となる。

TOYOTA

自動車産業では、Toyotaがこの戦略を巧みに利用した例として挙げられる。TOYOTAは品質と信頼性を重視する戦略を採用し、その結果、世界最大の自動車メーカーとなり、その地位を長年保持している。また、TOYOTAは環境に優しいハイブリッド車の市場においても先駆者となり、その分野でもナンバーワンの地位を確立した。これらの戦略により、TOYOTAは自動車産業における強固なリーダーシップを築いている。

まとめ

中小企業が市場シェアを獲得するメリットについてお分かりいただけただろうか。
ランチェスター戦略は中小企業のビジネスにおいて実務にとても当てはめやすいのも特徴だ。ランチェスター戦略において一番大切な考え方は、市場の圧倒的ナンバーワンになることだ。そして、その市場を独占することのメリットはとても大きいものがある。

下記記事ではナンバーワン戦略の実行手順について詳しく書いている。
ビジネスを急成長するヒントとなる情報が記載されているため、是非参考にしてみて欲しい。
経営者が実施すべきナンバーワン戦略のメリットと実行手順

弊社では完全成果保証としてBtoB企業向けの商談獲得サービスを提供しており、市場を独占状態にする事例も数多くある。もし劇的な事業成長を求めている場合、ぜひお気軽に相談してみてほしい。