COLUMN経営コラム
マーケティング
2020.03.10
問題を解決するナッジ手法【成功事例有】
現代の魔法「ナッジ」とはなにか?
ナッジとは2017年にノーベル経済学賞を受賞したリチャード・セイラー博士が提唱した理論で「小さなきっかけを与えて、人々の行動を変える戦略」を指す。
ナッジは和訳するとひじで軽くつくという意味で、小さなきっかけを与えることで、相手の行動を制限することなく、あたかも自身がそう選択したかのように行動させることを可能にする。ナッジは「現代の魔法」とも言われ、各国の政策やビジネスなど多方面に活用されるようになっている。
本章ではナッジ手法を活用した問題解決事例をご紹介する。是非ご自身のビジネスに置き換えてみてほしい。
ナッジ手法での問題解決事例
イギリス政府の税金滞納率の改善
ナッジを政策に活用するためのイギリスの専門チームBITでは、税金の滞納者への通知に同じ地域に住む住民の納税率を記載することで、納税率に変化が現れるかの社会実験を行った。
従来通りのただ納税を催促する通知をやめ具体的な納税率を記載し「あなたの住む地域のほとんどの人は期限内に納税しています」という内容に変え滞納者に手紙を送った。
それにより滞納者は社会的な強い圧力を感じるようになり、結果として納税率は68%から83%に増加させることができ、年間で3000万ポンド、日本円にして38億以上の税金の回収を実現させることができた。
東京都八王子市の大腸ガン検診率の向上
2016年、八王子市は大腸がん検診を受けていない人への案内文でテストをした。
ひとつ目は「今年受診した人は来年も検査キットを送ります」と利益を強調、ふたつ目は逆に「今年受診しないと、来年は検査キットをお送りできません」と損失を表に出し案内文を送った。
実際のこのテストでは損失を強調した受診率が30%となり利益を強調した文面より8%以上も上回る結果となった。これは行動経済学で「プロスペクト理論」と唱えられており、人間は利益より損失に強く反応するという特性を利用したものだ。受診しないと翌年、検査キットが送られてこないという損失を回避したいという思いが、受診率を高めた。
こういったコストをかけず工夫一つで政策の効果を高めることができたことで話題になった。
放置自転車対策
京都にあるビルオーナーによる放置自転車への注意喚起の張り紙が話題になった。
「ここは自転車捨て場だ。ご自由にお持ちください」
ビルオーナーは自転車を放置しても責任を負わない、という意味でこのように呼びかけた。
結果としてこの張り紙の効果は明らかでその後の放置自転車は1台もなくなった。これも自転車を放置しない、という選択をさせるためのナッジ戦略だ。
あなたもナッジに動かされている
買い物をしているとき、買うつもりがなかったものをつい買ってしまった経験はないだろうか。
もしかするとそれはナッジによるものなのかもしれない。実際に、オススメ商品を目立つところに配置することにより購入率アップすることや、スーパー内のBGMをスローテンポの曲にすることにより滞留時間が増え、購入額が上がったなどの事例がある。
ナッジとは、身近のありふれた手法でわたしたちは知らずにさまざまなことを選択している。また、ナッジの応用で商品の購入や成約を促すことができるため、ナッジの活用を自社のマーケティングに積極的に取り入れてみよう。
まとめ
人間は先入観から物事を判断し、時には不完全な選択をしてしまうことがある。しかし、生活やビジネスにまつわるすべての選択に人間の特性を活用した「ナッジ」を用いることで、人々の問題解決に繋がるような企画やサービスの提供を実現させていくこともできる。
ナッジは営業や接客などの実務にも応用できるため、営業戦略や社員教育などに役立てるのも検討してみよう。